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5/30 思ふまゝなる、今宵かな、月は朧で、夫(つま)はきて。(『大幣』)
2010年
12/30 君の心の叢雲に、涙の雨の降らぬ日もなし。(「隆達節歌謡」)
2008年
/ 様に貰ひたる邯鄲の枕、なれど手枕ほどはない。(「延享五年小歌しやうが集」)
10/11 日にち毎日主まつばかり、主にまたるゝ身がほしい。(「潮来風」)
10/03 また見て候[そろ]憂き人を、うたたねの夢に。(「隆達節歌謡」)
06/11 鳥に恨みがかずかずござる、更けて待つ夜ときぬぎぬと。(『賤が歌袋』)
「更けて待つ夜」は待っていてもなかなか男のこない夜。「きぬぎぬ」は別れの朝。時間を知らせる鳥への恨み言。
05/18 梅の莟〔つぼみ〕とおまへの文は、開くうちから待ちかねる。(『音曲神戸節』)
05/10 余りつらさに、筆とり上げて、落つる涙は、硯水。(『江戸いたこほん』)
05/05 焼野の芒〔すすき〕と身は痩(せ)ながら、月に添ふ日を待てばこそ。(『粋の懐』)
04/20 佐渡と越後は筋向ひ、橋を架きょやれ船橋を。(『山家鳥虫歌』)
言祝ぎ歌。言祝ぎ歌の多くは、めでたい内容を持った歌だが、この歌はめでたい席でよく歌われるために、言祝ぎ歌として認識されるようになった歌。
04/13 袖の裄〔ゆき〕こそ長ひがよけれ、嫌なお江戸の長の留守。(『延享五年小歌しやうが集』)
「裄〔ゆき〕」は着物の背から袖口までの長さ、「ゆきたけ」。「着物の裄だったなら長いほうがいいけれど、江戸に出かけていて会えないのが長いのは嫌なことだ」
04/11 雪やこほりと、へだてはあれど、とけておるれば、おなじ水。(『音曲神戸節』)
04/09 思ふ心のいつはりなきは、虎と見る箭の石に立つ。(『越風石臼歌』)
03/21 こがるゝおもひかアノ青柳は、露も重気〔おもげ〕なふり見せる。(『粋の懐』)
03/15 主は松虫、わしや鈴虫よ、逢ふも別れも、なくばかり。(『潮来風』)
03/09 笛による鹿は、妻故に死する、我等もさまに、やれ命。(『松の葉』)
「我等」は、現代語では複数形だが、ここでは「我」のへりくだった語。
03/02 舟が着く着く百廿七艘、様がござるかあの中に。(『山家鳥虫歌』)
01/26 君は紅我捩衣〔もじころも〕、八重につゝめど色に出る。(『淋敷座之慰』)
01/22 あうてはなしは山々あれど、まさか顔みりやむねせまる。(『潮来考』)
「まさか」は「正明」か。
01/19 ものやおもふと問ふ人あらば、せめて語らんぬしのこと。(『笑本板古猫』)
01/12 ふつと意気じやと思ふたからに、義理もいとはず浮名たて。(『潮来風』)
01/07 思ひ思ひてあふ夜はしばし、鳥のそらねもとめよかし。(『ぬれぼとけ』)
01/01 かたい契りの幾千代迄と、岩に根おろす姫小松。(『粋の懐』)
12/27 夢の手枕つい夜が明(け)て、わかれ煙草のおもひのけむり思ふかたへとなびくゆく。(『歌澤節』)
12/08 うき名たつ田の、山みち行けば、顔に紅葉が、いよ散りかゝる、もみぢがちりかゝる。(『大幣』)
12/07 土手のかはづのなくのも道理、水にあはづにいるからハ。(『音曲神戸節』)
「水にあわず」と「見ずに逢わず」とをかけている。
11/29 独り寝覚めの長き夜に、誰を松虫鳴き明かす。(「隆達節歌謡」)
「松虫」と「待つ」とをかけてある。待っているのに男はやってこない、という歌意。
11/20 月待つ月は冴えもせで、君待つ月は冴ゆるよの。(「隆達節歌謡」)
「月見で見る月よりも、あなたを待つときに見る月のほうが美しく感じる」。妻問婚のため、女が男がやってくるまで待つあいだ月を見る、という歌は多い。
11/16 ほどが経たらば薄からで、なほも思ひの真澄〔ます〕鏡。(「隆達節歌謡」)
「馴染んでからも、飽きがくるどころか、ますます愛情が増すことだ」
11/11 めでたやな今日立ち初むる鶴の子は、千代の齢を重ぬべきかな。(「隆達節歌謡」)
11/09 しばし待て硯の上の薄氷、うち解けてこそ文も書かるれ。(「隆達節歌謡」)
11/08 宵に来て暁帰る七瀬川、契り深かれ、川は浅かれ。(「隆達節歌謡」)
11/07 昔の人は恋をばせぬか、など暁の鐘をば定めし。(「隆達節歌謡」)
「昔の人は恋をしなかったのだろうか。どうして恋人の別れの時間を告げる暁の鐘というものを定めたのだろうか」
8/19 様は釣竿、わしや池の鮒、釣られながらも面白い。(『山家鳥虫歌』)
もちろん「釣られる」とは恋に落ちることを指す。
8/17 おもふ侭なるのや、今宵かな、月は朧〔おぼろ〕につま〔夫〕は来て、もみぢ葉を見よ濃いは散る。(『松の葉』)
8/12 松に春風香りくる、いざや連れ立ち梅咲く里へ行くまいか、道は菜種の花咲く野辺よ。(『艶歌選』)
8/3 さても其方の立ち姿、春のあをやぎ糸ざくら、心がたよたよと。(『松の葉』)
7/10 空の星様かぞへて見れば、九千九つ八つ壱つ。(『延享五年小歌しやうが集』)
家の外に出て、星を数えながら恋人が来るのを待っていたら、いつまで経っても来ないので、9981まで数える羽目になった、という歌意。
7/7 あへバ嬉しい顔見るけれど、わかれおもへバまたふさぐ。(『音曲神戸節』)
6/26 すこしやすまふとうたたねすれば、ぬしのゆめ見てまたふさぐ。(『潮来絶句』)
6/22 秋の七草むしの音に残る蛍が身をこがす君を松虫なくねにほそる恋といふ字がたいせつじ〔ぢ〕や。(『歌澤節』)
6/20 まゝになるよでまゝにもならぬ、人の恋路もかうかいな。(『潮来風』)
6/16 とりのねも鐘もきこえぬ里もがな、ふたりぬる夜のかくれがにせん。(『新なげぶし』)
「鳥の音」も「鐘」も恋人たちが別れなくてはいけない夜明けを告げるもの。そういったものが聞こえない、時が止まったままの場所がもし存在するのなら、そこで逢いたいという意。
6/16 ひぐれひぐれにあなたのそらを、みてはおもはずそでしぼる。(『潮来絶句』)
6/12 花のあけぼの夕べの秋も、くらべぐるしきわが心。(『松の葉』)
6/7 ねてもねられぬ此の明月は、君のおもかげ身にそひて。(『ぬれぼとけ』)
6/6 三五夜の新月、隈なきぞ惜しまるゝ、千里の外の人までも、さぞや眺め明かさん。(『艶歌選』)
いわずとしれた白楽天の「八月十五日宮中に独り直し、月に対して元九を憶う」の「三五夜中新月色…」を本歌取りにした歌。元の歌は遠距離の友人を思う歌だが、ここでは恋人と解釈するべきか。
6/3 すゝり墨とハおもふてくれな、なきの泪で書いた文。
硯墨とハわしやおもやせん、まつよ涙でよむわいナア(『音曲神戸節』)
5/26 これの御館御繁盛なさる、奥は琴の音中の間は鼓、門は物申〔ものも〕が絶えませぬ。(『山家鳥虫歌』)
言祝ぎ歌のひとつ。「物申〔ものも〕」は来客のこと。来客は「物申す」あるいは「申し」という言葉で挨拶をした。
5/23 すいな人さへ恋路にまよふ、ましていたらぬわしじやもの。(『艶歌選』)
5/13 皐月五月雨蓬に菖蒲、わたしやお前に幟ざほ、エヽモほれりやしよことがないわいな。(『歌澤節』)
5/5 ぬれに重ねる五月雨よりも、いつまァ晴れるよわしが胸。(『粋の懐』)
4/28 ぬしを松むし鳴音〔なくね〕を止〔やめ〕ば、もしやそれかと気がもめる。(『粋の懐』)
「あなたを待っていて、松虫が鳴くのをやめると、あなたが来たのではないかと思って気がもめる」。「待つ」と「松虫」とをかけている。
4/28 恋の欲だよ今宵もあすも、あふに限りがないにつけ。(『粋の懐』)
4/15 風さそふ音とおもへどもしや又おもわせぶりにしのばるゝ心の内のしんの闇とび立程に思ふのを知らぬふりして見てもどふもねられぬ恋のくせ。(『改正哇袖鏡』二十六)
4/7 こんど御座らば持て来てたもれ、ぎふのお山の檜の木の枝の、浮世がかりのおもひばを。(『松の葉』)
4/3 声はすれども姿は見えぬ、君は深山のきりぎりす。(『山家鳥虫歌』)
「きりぎりす」はコオロギを指す。『淋敷座之慰』『吉原はやり小歌総まくり』などに類歌多数。
3/31 思ふほど言ふは言はれず、言ふほどは書きも書かれず、何とせうぞの。(「隆達節歌謡」)
2/20 君はさやけき十六夜月よ、私は廿日の月をまつ。(『越風石臼歌』)
「月」は「着き」にかけてある。「十六夜月」は戌の刻、「廿日の月」は亥の刻をさす。人に知られて浮名が立つかもしれないが早く来る時間か、人には知られないが遅い時間か、という選択である。
「月を待つ」に関わる歌としては、「恋をせば恋をせば、二十三夜の月を待て、月の偽りなきものを、ててててからこ、しやんぎしやかんこ、はらりついやひよ、ついやついやつやに、ちやうららに、やうつほほ、忍び踊りはおもしろやおもしろや。」(『松の葉』)や「廿三夜の月待つおれを、様を待つとはたがいふた。」(『延享五年小歌しやうが集』)などがある。
2/16 ゑんとじせつをまてとはいへど、じせつどころかかたときも。(『潮来絶句』)
2/12 年と今宵を引替ほしや、長し短かしまゝならぬ。(『潮来風』)
恋人との逢瀬の短さを嘆いた歌である。夜明けを告げる烏や鐘を歌った歌は多いが、このような歌い方は興味深い。
尉と姥とが舞(ひ)遊ぶゆへ、孫や子共(供)は囃子方。(『延享五年小歌しやうが集』)
この5つの歌で一連のめでたづくしの歌である。
1/4 松と竹とが繁昌するで、尉と姥とが舞(ひ)遊ぶ。(『延享五年小歌しやうが集』)
1/3 亀がお庭に甲ほすならば、松と竹とも繁昌する。(『延享五年小歌しやうが集』)
1/2 鶴が御門に巣をかきよならば、亀はお庭に甲を乾そ。(『延享五年小歌しやうが集』)
1/1 めでためでたがたび重なりて、鶴が御門に巣をかけた。(『延享五年小歌しやうが集』)
12/30 伊勢の荒布と此(の)君様は、見れば見る程しほらしや。(『浮れ草』)
「しほ」は愛らしさ。「塩」にかけている。
12/20 今朝のうの字は嬉しのうの字、消ゆる間もなきうの鏡。(『山家鳥虫歌』)
今日はあの人に逢える、という嬉しさの朝化粧とも。馴染客との逢瀬に満悦の遊女を描いた遊里歌とも。
11/27 美濃に妻持(ち)尾張に住メば、雨は降らねど蓑恋し。(『延享五年小歌しやうが集』)
類歌に「阿波に妻持ち讃岐に住めば、鶉鳥かや粟恋し」『淡路農歌』がある。
11/14 いつも見れども美しの振りや、面向不背か、花の盛りか。(「隆達節歌謡」)
11/08 夢かうつつか幻か、思ふお人にはたと逢うた。(「隆達節歌謡」)
10/26 よしやうらめし、馴れずはかほど、物は思わじ、さりとては。(『当世なげ節』)
「もし恋をしていないのなら、こんなに辛くはないだろうに、いや、でも…。」
10/25 宵の鐘なら千里もひゞけ、きかせともなや明ケの鐘。(『朝来風』)
10/10 ちらりちらりとふる雪さへも、つもりつもりて深くなる。(『朝来考』)
9/26 包むとすれど、色にぞ見ゆる、心に余る、花のかほばせ。(『ぬれぼとけ』「柏木」)
「花のかほばせ」は「恋心」のことだろう。百人一首の「しのぶれど色にでにけり我が恋はものや思ふとひとの問ふまで」を踏まえた歌だろう(「本歌取り」という)。ちなみに、当時、遊女の芸名に『源氏』の帖の名前を付けることが多かったために、遊女の芸名を「源氏名」と言う。この柏木は文字通りの源氏名。
9/22 君は三夜の三日月様よ、宵にちらりと見たばかり。(『艶歌選』)
9/19 いとし殿御の目許〔めもと〕のしほを、入れてもちたや鼻紙に。(『山家鳥虫歌』)
「しほ」は愛らしさ。「あの人の目もとのチャームポイントを、ハンカチにくるんで携帯したい」。
9/16 いとし殿子〔御〕が京へ行(く)ほどに、水は出まいかまき川に。(『延享五年小歌しやうが集』)
「まき〔牧〕川」は兵庫県から京都府にかけて流れる川。『延享五年小歌しやうが集』の歌が採取された豊岡から、京都へ行くためには渡らなくてはいけない川。「いとしいあの人が京へ行ってしまう。牧川が増水して渡れなくなれば、水が引くまで旅ができないから、逢い続けることができるのに」
9/09 君を思へば琴引山で、爪のおちたも知らぬ恋。(『延享五年小歌しやうが集』)
「琴引山」は島根県の地名。「琴」と琴を弾く際に用いる「爪」をかけている
9/07 まれに逢ふ夜は人目をしのび、語りつくさん我がおもひ。(『松の葉』)
9/06 沖の大船〔せん〕いかりでとめた、とめてとまらぬコチヤ色のみち。(「江戸端唄集」『改正哇袖鏡』)
「沖の大船は碇でとまるが、とめようにもとまらないのはわたしの恋心だ」。
9/04 広田はひろし、金屋は名所、ぢきない千草山中よ。
返し : ぢきない千草山中なれば、色よい花は山に咲(く)。(『淡路農歌』)
「広田」・「金屋」・「千草」はともに淡路の洲本市の地名。「広田も金屋もいいところだ。それにしても千草は田舎だ」と言われて「田舎だからこそ美しい花が咲くのだ」と言い返す。「色よい花」は美しい男女の意味もあろう。花を人間にたとえる歌として、「殿の寝姿今朝こそ見たれ、五月野に咲(く)百合の花。」(『延享五年小歌しやうが集』類歌多数あり)などがある。
9/02 つらき心も変りやせんと、定めなき世を頼むかや。(『大幣』)
8/27 月を見ばやとちぎりし人も、こよひ袖をやしぼるらん。(『松の葉』)
「一緒に月を眺めましょう、と約束したあの人も、今夜は会えなくて、泣いているのでしょうか」。
8/18 鳥と鐘とは思ひの種よ、とは思へども人により候。(『隆達節歌謡』)
「夜明けを告げる明けの烏と鐘は、いつでも後朝(きぬぎぬ)の別れを惜しむ恋人たちの悩みの種だ。とは言っても、薄情なあなたはそんなに悩んではいないのでしょう。」つれない恋人を嘆いた歌か。あるいは「いま通っている人/通ってくる人はそんなに愛情が深くもないので、後朝の別れもつらくない」という意味か。
8/11 あやめに似たる杜若はあれど、ぬしに見かへる花はない、ほんに浮き世はまゝならぬ。(『江戸端唄集』)
8/05 うらみない中〔仲〕もうらみつれば、うらみらるゝうらみつけじと思ふよの。(『編笠節唱歌』)
8/03 思〔おも〕て想〔おも〕はぬ振(り)しよとすれば、思て思はぬ振(り)やならぬ。(『延享五年小歌しやうが集』)
7/31 月は山谷の西へも入るが、我は夫〔つま〕なき床に入る。(『新投節』)
7/30 ちへ〔ゑ〕のつるべが短いゆへに、ぬしの心がくミにくい。(『音曲神戸節』)
7/28 みたいあいたい山ほとゝぎす、すがたならずバこゑなりと。(『音曲神戸節』)
7/23 きみの心は雁金つばめ、くるとおもへばはやかゑる。(『笑本板古猫』)
7/23 海人の釣舟身はこがるれども、甲斐〔櫂〕もなき世の浦に住む。(『淋敷座之慰』)
7/21 さても優しの蛍の虫や、忍(ぶ)縄手に火を点す。(『延享五年小歌しやうが集』)
7/20 思ふこゝろのいつはりなきは、虎と見る箭の石に立つ。(『艶歌選』)
7/17 富士の山さへ十里にや足らぬ、恋の登りはきりがない。(『粋の懐』)
7/15 面白の春雨や、花の散らぬほど降れ。(『隆達節歌謡』)
7/12 むらあやでこもひよこたま。(『閑吟集』)
6/24 わしが身は唯算盤粒よ、思案して見る置(い)て見る。(『淡路農歌』)
6/18 猿沢の池の水ではない、こひがすみそろ身の池に。(『松の葉』)
6/15 あわで此世を過していても、すゑはたがひの胸のうち。(『笑本板古猫』)
6/11 辛気晴らしにまぎらす酒も、思ひ深きに酔ひもせず。(『艶歌選』)
6/06 恋は、重し軽しとなる身かな、重し軽しとなる身かな、涙の淵に、浮きぬ沈みぬ。(『閑吟集』)
5/30 包めども色は涙に顕はれて、袖にとくとくとくとくとくと。(『隆達節歌謡』)
5/27 また見て候〔そろ〕、憂き人を、うたた寝の夢に。(『閑吟集』)
5/21 水が凍るやらん、湊川〔みなとがは〕が細り候〔す〕よなう、我らも独り寝に、身が細り候よなう。(『閑吟集』)
5/19 切りたけれども、いや、切られぬは、月隠す花の枝、恋の道。(『宗安小歌集』)
5/15 恋といふ字は一字に書ど義理とせけんにひかされて今は互ひの胸のうち気がねくらふもするわいな。(『江戸端唄集』)
5/14 葵とはあふひと書て嬉しさは二葉の露にもらさじと移る遠寺の鐘の音にもゆる思ひをさつさんせ。(『江戸端唄集』)
5/09 起きも寝もせで在られぬ時は、涙ほかには文ばかり。(『新投節』)
5/07 色の浮世に住(み)ながら、野暮な人さん語り、こふじやそふじやと喧しい、富士の山ほど言ゝ立てられて、夢の間程も逢いはせぬわいな。(『浮れ草』)
5/06 道の街〔ちまた〕の柳の枝に、わしが心の遣(る)瀬なや、アレ春風が吹くわいの。(『浮れ草』)
5/05 浅くとも清き流のかきつばた、飛でゆきゝのあき笠をのぞいてきたかぬれつばめ、顔がみとふはないかいな。(『江戸端唄集』)
5/03 おきてみつ寝てみつまてど便りなく、蚊帳の広さに只一人蚊をやく火より胸の火の、燃ゆる思ひをさつさんせ。(『江戸端唄集』)
5/01 恋路ほどもの憂きことは世にあらじ、逢はねば見たし、逢へば別るる。(『隆達節歌謡』)
4/26 殿の寝姿今朝こそ見たれ、五月野に咲(く)百合の花。(『延享五年小歌しやうが集』)
4/23 恋をするなら猩々緋染め、たとひ朽ても色さめぬ。
恋をするなら露草染に藍の重なる深き色。(『越風石臼歌』)
4/19 君と我とは朽ち木の伽羅よ、中のよいのを人知らぬ。(『浮れ草』)
4/17 秋の竟夜〔よすがら〕隈なき月を、独り見る夜は怨めしや。(『新投節』)
4/16 花に嵐の吹かば吹け、君の心のよそへ散らずは。(『隆達節歌謡』)
4/15 何としたやらわしや此(の)頃は、生マ木の筏、木〔気〕が浮かぬ。(『淡路農歌』)
4/15 弓の上手は江戸の役者ととくわいな、にらんであてる、さうらばや。(『小歌志彙集』「なぞうた」)
4/11 鳥に恨みは逢ふ夜の事よ、歌へ今宵の独り寝に。(『新投節』)
4/08 恋しゆかしも様ゆゑばかり、逢はぬ昔に。(『山家鳥虫歌』)
4/03 思ひ染川わたらぬさきは、かほど深きと白浪た。(『山家鳥虫歌』)
4/02 吉野川には棲むかよ鮎が、わしが胸にはこひがすむ。(『山家鳥虫歌』)
3/25 泣いても笑うても行くものを、月よ花よと遊べただ。(『隆達節歌謡』)
3/23 我が心我に従ふものならば、かほど苦しき恋は無用と意見せうずもの。(『宗安小歌集』)
3/22 われが思ひはあの浮き雲よ、いづこ行方ぞ定めなき。(『松の葉』)
3/20 独り寝は嫌よ、暁の別れありとも。
独り寝も好やの、暁の別れ思へばの(『隆達節歌謡』)
3/19 酒で忘れて又たばこでは、おもひだしてはひとりごと。(『粋の懐』)
3/18 しのびしのぶやかよひぢの、人の心のおくいかに、とけて見えこし今よりも。(『玉晁小歌集』)
3/17 馬鹿な奴だといはれておくれ、粋がわたしの身の苦労。(『粋の懐』)
3/16 上手役者は小野小町ととくわいな
あながないとてさうらばや。(『小歌志彙集』「なぞうた」)
3/13 渦がまひます広島の沖に、渦ぢゃごじ(い)せん靨(えくぼ)でごじす、お前とわしが中ぢゃもの。(『山家鳥虫歌』)
3/10 千里走るやうな虎の子が欲しや、やるぞ此の文富士までも〔江戸までも〕。(『山家鳥虫歌』)
3/9 月に村雲世は儘ならぬ、障り勝(ち)成る恋の道、待(つ)夜つれなく積る雪。(『浮れ草』)
3/6 余所もなり行(く)身は捨小船、ほんに寄る辺もなひわいな、我と焦がるゝ恋の道。(『浮れ草』)
3/5 恋て辛気や身は陽炎の、いつか巡りて、君に逢を。(『淋敷座之慰』)
3/4 けふの日もたちまたあすの日も、気をもみぢ葉の立田川。(『笑本板古猫』)
3/1 おれは思へど若しこなさんは、芋の葉の露ぶりしやりと。(『延享五年小歌しやうが集』)
2/27 つれなき君に相馴れそめて、浮名は龍田、思ひふかくさ。(『吉原はやり小歌総まくり』)
2/23 月夜の烏は呆[ほ]れて鳴く、我も烏かそなたに惚れて泣く。(『隆達節歌謡』)
2/20 君は松むし私[わし]はこふろぎといひて鈴虫ふりすつる。(『越風石臼歌』)
2/16 あふていひたやつかのまなりと、せめて思ひのならましを。(『ふでしやみせん』)
2/13 立(て)ば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花。(『延享五年小歌しやうが集』)
2/11 月は冴ゆれどアヽ儘[まま]ならぬ、あたら憎らしい村雲の、男の心と秋の空、定メないのが気に懸[かか]る、エヽ何とせよかへ。(『浮れ草』)
2/9 恋をはじめた人恨めしや、今の我身のつらき故。(『淋敷座之慰』)
2/7 三草山より出づる柴人、荷負ひ来ぬればこれも薫物[たきもの]。(『延享五年小歌しやうが集』)
2/2 様のやうなやうな瓢箪男、川へ流して鯰と語りや。(『山家鳥虫歌』)
1/31 芳野の山を雪かと見れば、雪にはあらで花の吹雪よ。(『艶歌選』)
1/29 様はさんやで宵々ござる、せめて一夜は有明に。(『山家鳥虫歌』)
1/28 むちやなよふでも是よく聞やれ、おれも男じや末をみろ
あすの命もしれぬが浮世、すゑを見ろとはあんまりな。(『笑本板古猫』)
1/25 あかね染には藍にて重ぬ、色の深きをこひといふ。(『越風石臼歌』)
1/24 きみが手なれの古しやみひけば、おもひみだるゝいとのいろ。(『ふでしやみせん』)
1/23 恋のふちせに身はなげぶしの、思ひ沈むは我れ独り。(『当世なげ節』)
1/22 そつと二人が気を置ごたつ、たれも当たりに[辺りに]こぬ様に。(『粋の懐』)
1/21 みたれみたるゝあのくろかみは、わきていわ[は]れぬわか思ひ。(『新投節』)
1/20 我が恋は、葛の裏葉のきりぎりす、うらみては鳴き、うらみては鳴く。(『吉原はやり小歌総まくり』)
1/19 おもひまはせば世のなかに、わが身ひとりとなげきかな。(『ふでしやみせん』)
1/18 羨[うらやまし]や我が心、夜昼君に離れぬ。(『閑吟集』)
1/16 我御料[わごりょ]は心に筑紫弓、引くに強の心や。(『閑吟集』)
1/15 わが恋は一昨日見えず昨日来ず、今日訪れ無くは明日のつれづれ如何にせん。(『梁塵秘抄』巻二)
1/14 しんの闇にも迷はぬ我を、あゝさて其様の迷はする。(『松の葉』)
1/12 人はどのよにいわふとままよ、やねへふる雪むねでとく。(『笑本板古猫』)
1/11 正月言ば[葉]かわしやしらねども、明くりや亥としさ[愛しさ]まさるふみ。(『粋の懐』)
1/10 程の有とは恋路じやないぞ、近き遠きは言はぬこと。(『越風石臼歌』)
1/8 君は出づる日、我は雪、逢へば心がうち解くる。(『隆達節歌謡』)
1/7 雨はしきりに降れども晴れる、わしが思ひはいつ晴れる。(『音曲神戸節』)
1/6 来いと云たとて行かれる道か、道は四十余里夜は一夜。(『山家鳥虫歌』)
1/4 山端にこそ月はあれ、恋の道にはつき〔尽き〕もなや。(『編笠節唱歌』)
1/3 たとひ逢はずと文さへ見れば、文は妹背の橋となる。(『艶歌選』)
1/1 めでためでたの若松様よ、枝も栄える葉も茂る。(『山家鳥虫歌』巻頭歌)
12/30 お月の様にまん丸て丸うて、角〔か〕トのないこそ添(ひ)よけれ。(『淡路農歌』)
12/26 胸の間に蛍あるらん、焦がるるるるるる、いつも夜な夜な憧るる。(『隆達節歌謡』)
12/25 逢(ひ)た見たさは鳶たつ〔飛び立つ〕ばかり、籠の鳥かや恨めしや。(『延享五年小歌しやうが集』)
12/24 恋をするとは親達知らず、薬飲めとは曲がない。(『艶歌選』)
12/23 竹になりたやしちく竹に、本は尺八中は笛、末は殿御の筆の軸、思ひまゐらせそろかしく、エヽそれそれそふじやへ。(『浮れ草』妹背山)
12/22 浅黄着りやよし嶋着りや似合(ふ)、褐〔かちん〕前垂弱腰に。(『延享五年小歌しやうが集』)
12/21 阿波に妻持(ち)讃岐に住(め)ば、鶉鳥かや粟恋し。(『淡路農歌』)
12/20 人は悪□〔うカ〕ない、世に〔はカ〕兎に角に、破れ車でわが悪い。(『淡路農歌』)
12/19 誰そや此の夜中に、鎖いたる門をたゝくは、たゝくともよもあけじ、宵の約束なれば。(『淋敷座之慰』琴の歌品々)
12/18 あただうき世にあればこそ、人に恨みも、人の恨みも。(『隆達節歌謡』)
12/15 思ふ心のありたけこたけ、言ふ(て)墨さしやりかんな。(『浮れ草』大工)
12/14 とてもかなわぬ浮世と知らば、とても得ならぬ恋路と知らば、軽くおこもの恋の道、しよくりしよ所々くりしよあいよの。(『淋敷座之慰』吉原しよくりしよ節品々)
12/13 深草少将様(さ)へ、九十九夜さを恋やみに、まして此(の)身は三百六十四夜さ。(『浮れ草』心意気)
12/11 千早振(る)かみも乱れて簪の、かゆひ(い)ところを書く文の、水櫛に咲(く)燕子花〔かきつばた〕(『浮れ草』東男)
12/10 廿三夜の月待つおれを、様を待つとは誰が言ふた。(『延享五年小歌しやうが集』)
12/09 おとこ選びに今年も暮れつ、また来る春もあだに散る、姿の花の移ろひし。(『艶歌選』)
12/08 まゝよまゝよて半としくらす、あとの半としハ寝てくらす。(『越志風俗部 歌曲』)
鮎は瀬に住む鳥や木にとまる、人は情の影に住む。(『淡路農歌』)
夫婦喧嘩と夜北の風は、宵に吹(い)ても夜半に凪ぐ。(『淡路農歌』)
恋に好んで船乗りももけて、今は由無い独り寝る。(『淡路農歌』)
紅葉踏(む)鹿憎ゐ〔い〕といへど、恋の文書(く)筆となる。(『延享五年小歌しやうが集』)
いまの今までたがひのくらう、くらうしたのも水の泡。(『音曲神戸節』)
面白のお月や、二人見ばなほ(『隆達節歌謡』)
様のつけざし名残の煙草、思ひ増(す)やら火がつかぬ。(『隆達節歌謡』)
身は鳴門舟かよ、阿波〔逢は〕で漕がるゝ〔焦がるゝ〕。(『閑吟集』)