彼に対する批判はいくつもありますが、そのほとんどは時代の制約に関するものです。現在では歓迎されざる思想であっても、当時はそれなりに普及していた思想がほとんどです。
彼は人種主義者でした。白人は他の人種よりも優れていると固く信じており、白人と有色人種との混血に「退化」という語を多用していました。彼の作品の多くでは、白人以外の人種に対して非好意的な描き方をしています。
当時は人種的な偏見が現在よりもはびこっていました。ラブクラフトもまた、それらの思想の信徒だったのです。
同時に、人類の分化発生説を支持しており、人種はそれぞれ別の原人から独自に進化し、人間は一つの種ではなく、種のレベルで隔たっている、と信じていました。
1920年台という時代は、人類の分化発生説が衰退していった時期ですが、まだまだ根強く残っていた時期とも言えます。人種主義者たちにとって、人種間が大きく隔たっている、という説は、精神のよりどころでもありました。
また彼はファシストでもありました。
一次大戦後のドイツはアメリカの同盟国であり、ある時期まではヒトラーもアメリカの同盟者でした(サダム・フセインがそうだったように)。ラブクラフトの時代にファシストであることは、必ずしも否定的な意味合いを持つわけではありませんでした。
ラブクラフトの作品には、これらの思想が色濃く反映されたものもあります。ゲームキーパーはその裁量で取捨選択をおこなうべきでしょう。