書評 −この本でらええでぇ−
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2002/08/19
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 本というものは、人からすすめられて読むものではないが、「なにかおもしろー本なーでゃーすか?」ってなときは人がすすめる本を読んでみたくなるものである。うむうむ。
 まー、とりあえず読んで印象に残った本について好き勝手なことを書き連ねていくので、秋のつれづれの参考にでもしてください。


2004/08/15
 J・P・ホーガン 『揺籃の星』上・下 創元SF文庫 2004 ¥720 ¥840

 裏表紙の「ヴェリコフスキー」の名前につい惹かれて購入してしまった本。ヴェリコフスキーについては下巻の解説で言いたいことを先に言われてしまったので省略。アイザック・アジモフやカール・セーガンの科学エッセイで(彼らのSFは言うに及ばず)育った世代には、いきなり眉に唾をつけたくなる衝動にかられると思いますが。
 ・主人公たち少数の「正しい」知性の持ち主だけが世界の真実の姿を知っている。
 ・既存の学会と政府が、権益を守るためにそれを妨害する。
 ・こんなに「証拠」があるのに、「真実」を知るのが怖いから、人々は直視しようとしない。
 といった電波テイストあふれる作りになっているところが、ホーガンの他の作品から浮き上がっているように感じる。が、作者はそんなことは百も承知で書いているのでしょう。なんといっても、『ライフメーカー』シリーズのザンベンドルフの生みの親なのですし。その上、まさに解説者の言うとおり、出てくる理論出てくる理論、ことごとく、一般のSF読者なら突っ込みを入れたくなるものばかり、というあたり、確信犯。
 今作は『星を継ぐもの』に見られたような、パズルのピースひとつひとつがぴたりとはまっていくような、あの知的昂揚感はほとんど望めない(わずかに恐竜の話などにそんな匂いがしなくもない)。後半部分は特に『ターミネーター3』のような雰囲気が、思わず「この作品は読まなかったことにしようか」などという笑えない冗談がつい口をついてしまいました。
 世の中のありえないこと(まだ到達していない未来。まだ見つけていない技術。まだ出会っていない生命や文明)がもし現実だったらという設定の世界をいかに描くか、というのがSFのだとするなら、あちら側の人々の世界観がもし事実だったら、という世界を描いたSFだと言える。サブタイトルを付けるなら「鬼の首をとったようなトンデモさん」でしょうか。とりあえず、三部作らしいので、全部の執筆が終わるのを待ちましょう。



2003/06/11
 アンソニー・ホープ 『ゼンダ城の虜』 創元推理文庫 1970 ¥290

 ヨーロッパの架空の国ルリタニアを舞台に、その王家の血を引いている(かもしれない)イギリス人の主人公が、瓜二つのルリタニア王ルドルフ5世になりかわって王弟<黒のミヒャエル>と対決する冒険譚。戴冠式を前に国王を幽閉し、王位を狙う<黒のミヒャエル>とそれを阻止すべく活躍する主人公たち、という設定。
 第二部「ヘンツオ伯ルパート」は王妃フラビアとの素直になれない愛の物語。あの結末は、まー、作者も苦しかったんでしょう。



2003/06/02
 小栗左多里 『ダーリンは外国人』 メディアファクトリー 2002(第5版2003) ¥880

 外国人と日本人との考え方の違いなどを、作者(日本人)と夫(アメリカで育った)の日常的エピソードをからめて描いてみた本。・・・ということになっているが、作者もその夫もかなーり規格から遠いので、「外国人と日本人」というより「二人の」性格の違いによって起こったエピソードを集めたコミック、というほうが近い。
 この本を呼んで、麺類をすすらない自分に気づいた。今度からすすって食べてみよう。ところでこの本のことを話したら、ラーメンをすすりながら食べるとやけどすることがある、って言われたけど本当?



2003/05/05
 マイク・レズニック 『キリンヤガ』 ハヤカワ文庫 1999(第4版2000) ¥820

 キクユ族の伝統文化を守り、それにしたがって生きるために設立された小惑星世界「キリンヤガ」。その世界でムンドゥムグ(呪術的相談役)を務めるコリバの挫折と奮闘を描いた連作短編集。
 2作目の「空に触れた少女」がお勧め。



2003/04/08
 高瀬理恵 『公家侍秘録』 小学館 

 貧乏貴族(この時代、貧乏でない貴族はまずいないが)の日野西家に仕える公家侍・天野守武を主人公に江戸時代の公家を描いた漫画。守銭奴でがめついお姫さんが好キャラクター。



2003/03/21
 ネビル・シュート 『渚にて』 東京創元社 1965(第47版2000年) ¥800
 
 第3次世界大戦の影響で破滅が決定した世界で、その終焉に至る過程を静かに描き出した名作。全編にわたって、とにかく不気味なほど静かな雰囲気が、逆に凄惨な印象をあたえる。
 高校の英語の教材でした。


2003/02/24
 ドラマ『ザ・ホワイトハウス West Wing』 NHK 毎週金曜日 23:00〜23:50

 ホワイトハウスの住人たちをモデルにしたヒューマンドラマ。登場人物それぞれの個性が際立っており、非常に面白い。人種・宗教・同性愛などの差別問題から、米軍の武力行使、選挙戦略、法案成立まで幅広い問題とたたかうひとびとを描いた。バートレット大統領の痛快な裁断も見もの。
 随所に現政権(放映時はクリントン政権)に対する風刺・批判もみることができておもしろい。
 おもしろいTVドラマに飢えているのなら、これはおすすめ。



2003/02/15
 篠永哲&林晃史 『虫の味』 八坂書房 1996(第6版2002) ¥1800

 タイトルのとおり、さまざまな虫の味に挑戦したエッセイ集です。味のみならず、対象の虫についての豆知識・漢方薬での扱いなどにも筆は及んでいる。そしてなにより、周囲の人間にも食べさせてみた「いたずら事例集」でもある。
 わたしの住む地方では蜂の子を「へぼ」と呼んで食用にしており、またイナゴも好きなので、多少の虫には抵抗感がないつもりだったが。ゴキブリやハエはちょっと遠慮したい。清潔にそだてた養殖モノならまだしも・・・。もちろん、著者たちも食べる以上は衛生には気を配っているのだろうが。



2003/01/31
 アイザック・アジモフ 『神々自身』 ハヤカワ文庫 1986 ¥760

 ストーリー・設定・章構成、どれをとってもおもしろい。タングステンがプルトニウム186(186!)という摩訶不思議なプルトニウムに変換されることが発見され、エネルギー問題は一気に解決したかに見えたが、その先には陥穽が・・・。二つの世界の科学者たちの奮闘を描いたSF長編。



2003/01/12
 スティーブン・ジェイ・グールド 『ワンダフルライフ』 『パンダの親指』 『ニワトリの歯』 『フラミンゴの微笑』 早川書房

 進化論を中心に、生物学の歴史や科学的思考について思いをめぐらせた好エッセイ。



2003/01/03
 J・G・バラード 『時間都市』 創元推理文庫 1969 ¥190

 J・G・バラードの幻想的な短編集。「時間の庭」はとてもファンタスティックな雰囲気の好作。



2003/01/01
 みなもと太郎 『風雲児たち』 巻1〜30 潮出版社
         『風雲児たち 幕末編』 巻1〜 以下続刊 リイド社

 江戸時代史コミックとしてお勧めのシリーズ。最初は幕末史を描くつもりが、幕末には欠かせない江戸時代の歴史を描いているうちに30冊になってしまったという(笑)。所期の予定を外れたが、江戸時代史として非常によくできている。
 月刊「コミックトム」で連載していた江戸時代史コミック。現在月刊誌「乱」で幕末編を連載中。



2002/12/30
 フレッド・カサック 『殺人交差点』 創元推理文庫 2000 ¥740

 やられました。このトリックはすごいです。



2002/11/16
小野不由美 「十二国記」シリーズ
『魔性の子』(新潮文庫)、『月の影 影の海』、『風の海 迷宮の岸』、『東の海神 西の滄海』、『風の万里 黎明の空』、『図南の翼』、『黄昏の岸 暁の天』、『華胥の夢』(以上講談社)

 小野不由美の人気シリーズ。
 麒麟と王の関係、天界の存在等々、一見理想的なシステムに見えて、その実はわれわれの世界同様、多くの矛盾と混沌に満ちている。その世界で必死に生きていく人々を描いた壮大な叙事詩。
 一作目の『魔性の子』のみホラー仕立て。最新作の『華胥の夢』は短編集。
 楽俊がすっごくいい味を出しています。彼に救われたのは、登場人物だけでなく、読者も多いはず。



2002/11/10
ポール・アンダースン 『タウ・ゼロ』 創元SF文庫

 恒星間移民船が濃密な宇宙塵に遭遇して破損してしまい、減速することができなくなってしまった。船はひたすら加速を続けながら宇宙の深遠目指して突き進んでいく。その旅路の果ては…。



2002/11/03
R・ラッカー 『時空の支配者』 新潮文庫 1987 ¥440

 常識皆無の傍若無人天才ハリイ・ガーバーとそれに振り回される常識人(に見えて実はいろいろ壊れた性格)のジョゼフ・フレッチャーの人気コンビを描いた長編。
 不確定性原理を思いのままに操って期間限定の時空の支配者になる方法を手に入れたはいいが、おかげで世界はしっちゃかめっちゃかに。かつてこの二人が引き起こしたどんな大混乱よりも大きな混乱が巻き起こってしまう。
 あずまひでおのイラストが雰囲気にぴったり。



2002/10/13
ヴァーナー・ヴィンジ 『遠き神々の炎』上・下 創元SF文庫 1995 ¥920(上) ¥940(下)

 期待していて面白くなかった本というものがある。その逆に、期待していなかったのに面白かった本というものもある。そして、期待していて、期待以上に面白かった本もある。この本はまさしくそれだ。
 この本はストーリーもさることながら、世界観が非常に面白く作られている。銀河中心を中心にして、球(というよりレンズ状)に性質の違う世界が並んでおり、その世界間の特徴の違いが作品の鍵のひとつになっている。鉄爪族、ライダーなどなどさまざまな種族の設定も面白い。そのほかにもいろいろな要素が世界観に盛り込まれており、この壮大なのに緻密でよく作られた世界設定は必見。
 前書きで述べられている「ジュニア」(ギャラクシー誌1965年)はジュディス・メリル編『年刊SF傑作選』で日本語で読むことができる。



2002/10/06
アン・マキャフリー 『竜の戦士』 ハヤカワ文庫 1982 ¥621

 同じ作者の『歌う船』のヘルヴァと比べると、いまいち感情移入というか、共感がもてない主人公なのですが、それでも面白く読めました。副主人公のフ’ラルが微妙に成長しているのも面白い。
 2作目のタイトルが"Dragonquest ドラゴンクエスト"なのは有名。日本製人気ゲームのタイトルと同じだが、もちろんこの小説のほうがはるかに古い。ゲーム『ドラゴンクエスト』の英題が"Dragon Warrior"なのは著作権問題を回避するためが原因なのか?

 そういえば、ウォッチ・ホァーと竜の関係が結局わからずじまいだったのがちょっと気になる。レサのウォッチ・ホァーが死んだときに、ホァーが成長して竜になるようなことを書いていたような気がするのですが。それとも進化の過程で先祖が一緒だったという意味かしらん。



2002/10/06
芦奈野ひとし 『ヨコハマ買い出し紀行』1〜    

 文明の休耕期を魅力的なタッチで描く好作。



2002/10/06
神林長平 『戦闘妖精・雪風<改>』 ハヤカワ文庫 2002 (『戦闘妖精・雪風』は1984) ¥700
                『グッドラック 戦闘妖精・雪風』 2001 ¥860

 わたしがはじめて神林作品に触れたのは、中学生のころに読んだ『戦闘妖精・雪風』だった。その続編が15年ぶりにハードカバーで発売された、ということをあるコンピューター雑誌で読んだとき、すでに大学生になっていた。そしてそれが単行本化し、手に入れやすい値段となったのがこれ。『戦闘妖精・雪風<改>』は1作目の加筆修正版。

 フェアリイ星の空に舞う特殊戦術偵察機<シルフィード>の物語という体裁だが、メインテーマは戦闘機そのものにはない。人間と、人間製コンピューターと異星体<ジャム>という、表面的な言葉の会話は可能だが、より深いレベルでの理解はとてもできない3者のコミュニケーションの物語である。



2002/10/05
R・A・ラファティ 『九百人のお祖母さん』 ハヤカワ文庫 1988 ¥700
                『どろぼう熊の惑星』 ハヤカワ文庫 
          『つぎの岩に続く』 ハヤカワ文庫 

 童話とSFとファンタジーを一流のシェフが調理した至高のユーモア料理。ラファティ調満載の抱腹絶倒の短編集。ジュディス・メリル編『年刊SF傑作選』(創元推理文庫SFから訳本が出ている)に収録された「7日間の恐怖」「スローチューズデーナイト」も収録されている。
 『どろぼう熊の惑星』は短編集第2弾。『つぎの岩に続く』は第3弾。



2002/10/05
エイミー・トムスン 『ヴァーチャル・ガール』 ハヤカワ文庫 1994 ¥760

 人工知性の存在が法律で否定されている世界で、金持ちの放蕩息子アーノルドが理想の女性として作り上げたロボット・マギー。逃亡の旅の中で創造者と袂を分かち、人間の所有物としての存在から、自立した人格へと成長していく過程を描いた作品。



2002/10/05
アン・マキャフリイ 『歌う船』 創元SF文庫 1984 ¥640

 宇宙船の体と未曾有の音楽才能をもつ少女ヘルヴァの冒険を描いた作品集。機知と勇気に富んだヘルヴァの数々の冒険から眼が離せない一冊。



2002/10/01
J・P・ホーガン 『造物主ライフメーカーの選択』

 『〜の掟』の続編。われわれ生物の歴史にモデルを取った機械生物の進化の歴史を読むだけでも十分に元は取れる。もちろん、似非超能力者である主人公の手練手管も必見。今回はコンピューターをカモるぜ(笑)。
 前作を読んでいなくてもまったく問題ないストーリー構成なので、安心して初心者にすすめることが出来る。「SF嫌いに処方する薬は?」と聞かれたなら、この本か、同じ作者の『星を継ぐもの』を推薦するだろう(昔はP・K・ディックの『高い城の男』だったかもしれないが)。



2002/10/01
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア 『故郷から一〇〇〇〇光年』 ハヤカワ文庫 1991 ¥840

 J・ティプトリーJr.の短編集。評価の高い「そして目覚めると、わたしはこの肌寒い丘にいた」もすばらしいけど、やっぱり「故郷へ歩いた男」が一番いい。不覚にも感動してしまった。「ドアたちが挨拶する男」はラファティ調の好作品。



2002/09/19
ロバート・A・ハインライン 『月は無慈悲な夜の女王』 ハヤカワ文庫 1976 ¥920

 技師とコンピューターと活動家と教授で輸送用重力ドライバ以外の武力を持たない月の独立運動を指揮していく物語。物語の世界ではダビデはかならずゴリアテに勝つのです。



2002/09/17
アーサー・C・クラーク 『幼年期の終わり』 ハヤカワ文庫 1979 ¥660

 創元推理文庫のSF部門(現在の創元SF文庫)から出ていた『地球幼年期の終わり』(わたしが生まれる前にすでに入手困難(^^;)古本屋で見かけたら即ゲットだ!)の新規翻訳・改題版。
 「異星人の助言の下で理想社会を築き繁栄する人類。その行方は?」というテーマ。人類補完計画(C.『エヴァンゲリオン』)じみたストーリーが斬新。(もちろん『エヴァ』よりもずっと古い)。哀愁のただようドラゴンの背中がグー。
 アーサー・C・クラークはビッグスリー(アジモフ・ハインライン・クラーク)の最後の一人。スリランカ在住でいまなお現役。これからもずっと執筆を続けて欲しいものである。

(2002/10/13)
 東京創元社からの『地球幼年期の終わり』はまだ出版されていました(^_^;)。入手可能です。失礼しましたm(_ _)m。



2002/09/06
Isaac Asimov 『THE COMPLETE ROBOT』 Voyager(Harper Collins Publishers) 1995 $13.95

 アジモフのロボットものの作品集。『I,Robot』のスーザン・カルビン(ドノバン&パウエルものも別章だてになっている)ものや「サリーはわが恋人」などを集めて再編集したもの。映画化した『アンドリューNDR114』(アジモフ原作・シルバーパーク長編化)の原作も載っている。すっごい短い作品だけどストーリーにはまったく手を触れられていないことが分かる。高校の教科書にも教材として採用されていた「Robbie」もちゃんと収録されているのが個人的に高得点(^^)。スーザン・カルビンものではない章に入っているけど。

#デイビッド・ブリンの『the Earth』(『ガイア』)と並んでいて、どちらを買おうか迷って、こちらを買った本。でも気づいたら『the Earth』は店頭から消えてた。両方買っておけばよかったよ(T−T)。



2002/09/06
富野喜幸 『機動戦士ガンダム』I、II、III 朝日ソノラマ文庫 1980 ¥380

 人気テレビアニメシリーズのノベライズド作品。原作(TVアニメ)を知らない私が偉そうに語るのはアレだが(^−^;)、面白かった。名台詞やらストーリーやらを間接的に知っているだけで、父親の持ってきたVTRで数話と、大学のTV(笑)で『Gガンダム』を最後の10話ほど観ただけなので、恥ずかしながらこの人気シリーズに対して持っていたイメージはかなり限定されていた。読んでみて、人間ドラマやらアクションシーンやら、いい話満載です、と見直した。
 ちょっと科学考証とかアレだけど、まー古い作品だから。破壊されると核爆発を起こして放射能を撒き散らす核融合エンジンっていったい何? どんな燃料を使っていたのかすっげー気になります。きっとデューテリウムとかトリチウムとかは使ってないんだろうな。でも、空気がなくて散乱光が見えないので、宇宙空間ではレーザーは見えないって解説には感心。
 シャリア・ブルとアムロが戦死するあたりがすっげーいい話ですな。特にアムロの死の扱いが、やっぱり主人公ですな、と思わされる。思いっきり優遇された死に方です。
 あと、戦略シミュレーションとかは好きなので、ドズル中将の怒りはひっじょーによく分かる。『銀英伝3』や『4』で、無理の無い作戦を立てて、補給線を断ち援軍をつぶし、星系を制圧して1個艦隊を追い詰めたら、そいつに5個艦隊が全滅させられたような気分なんだろうな、きっと。「一番好きなキャラは?」と聞かれたらこの人を挙げるかな。「やらせはせん!」の台詞にとてつもなく共感。

 ところで、一般向けアニメの割に下ネタやベッドシーンがやたらと多いのはなぜ? 読者サービス?(^_^;)



2002/09/05
F・ブラウン 『スポンサーから一言』 創元推理文庫SF(現在の創元SF文庫) 1966 ¥170

 ショート・ショートの巨匠フレドリック・ブラウンの作品集。表題作は超おすすめ。是非現在の世界に欲しい一言である。いや、ほんとに。
 「闘技場」「地獄の蜜月旅行」などの著名な作品も収録されている。



2002/09/05
J・P・ホーガン 『星を継ぐもの』 創元SF文庫 1980 ¥600

 高校時代に読んだSFの中で一番か二番目に面白かった作品。推理小説としても十分に面白い。もっとも、最初の1/3くらいを読んだところで導かれた答がやっぱり正解だったのだが。これは主要な手がかりを最初に用意し、主人公が試行錯誤しながら小さな手がかりが増えていく、という形式のためだろう。
 ホーガンの用意した人類と月の起源という壮大な謎に、科学者という探偵が挑む。
 わたしが生まれるよりも前に書かれた作品だが、現在でもまったく色あせることなく通用する名作である。
 シリーズ化しており、現在4作品が書かれているが、この1作目が一番面白い。



2002/09/03
山本弘 『こんなにヘンだぞ! 『空想科学読本』』 太田出版 2002 ¥1300

 柳田理科雄「空想科学」シリーズへのツッコミ本。「空想科学」シリーズはたしかに面白いけど、「おいおい、その「仮に」は壊れているだろう」とか「作者自身があとがきでツッコンでいるところを指摘してどうするんだ」とか「もうすこしひねろうよ」という部分が少なからずある。『空想映画読本』で「ライトセイバーはレーザーじゃねぇっ!」と叫んだり、「『インディペンデンスデイ』の船は上半分を重力、下半分を反重力にすれば、上方向への噴射なんていらないだろ」と思わずつぶやいたりした人は多いはず。そういう場所へのツッコミをおこなっている本がこれ。
 まだ買ってきたばかりで最初のウルトラマンの部分しか読んでいないが、だいたい期待通りである。

 一応、山本弘は柳田理科雄に対して突っ込んでいるが、決して二人の姿勢が違うわけでも、まして対立しているわけでもない(わりと厳しい書き方はしてますが)。非論理的なものに対する指摘、という二人の姿勢は基本的には同じものである。ただ柳田氏は自分で無茶な仮定をし、その仮定で暴走してしまったり、対象への調査がわりと不十分だったり、ちょっとケアレスミスが多かったりするだけである。
 山本弘そのひとも、HP上で「劇中時間」と「現実(番組上の)時間」との違いを指摘しながら、『こんなに〜』の1部のウルトラマンの水流の部分で柳田氏と同じことをしていたりする。が、これが山本弘氏の論理性をすべて否定するものではない。だれだって間違いをおかすし、活字になっているものには間違いがいっぱい含まれている、という二人(山本氏・柳田氏)の主張を裏付けるものでしかない。
 要は、読者が作者の言うことをただ盲信せず、各々の頭蓋骨の中にある灰色のぷよぷよを働かせるべし、と二人は言いたいのである。その上で、この手の本の突っ込み文章を楽しめばいいのである。
 「空想科学読本」シリーズもこの本も面白い。

 さあ、残りを読んでしまおう(^♪^)。

(2002/09/05)
 …けっこうキツい書き方してますな。『空想映画読本』は「これはひどい」とおもう場所がたくさんあったけど(主に作品の読み込み不足)、その他の本もかなーり突っ込まれてます。作者の資質についてもかなり厳しい書き方してます。むむう。



2002/09/02
小野不由美 『悪霊の住む家』上・下

 「悪霊」シリーズの新シリーズ第1作目。すっっっごく怖いです。おいら的に鈴木光司『リング』の1200倍は怖いです。コソリすごいです。やっぱり夜中に一人で読むことをおすすめします。
 シリーズ一作目にして全員集合状態です(あ、前シリーズもそうだったか)。あと、ラストはちょっとだけ泣けます。前シリーズを知っている人も知らない人も、読むべし!



2002/09/02
(画)皇なつき (文)田中芳樹 井上祐美子 狩野あざみ 赤坂好美 『百帝図』 徳間書店 1995 ¥2600

 中国史を代表する皇帝(皇帝を名乗っていない人も含まれるけど)100人を非常にきれいなイラストと文章で紹介した本。南唐の李イクや清の睿親王ドルゴンなど、選択がすばらしい。中国史ファンは是非手元に置いておきたい一冊。
 「序」もいい文章だ。



2002/09/02
佐々木倫子 『Heaven?』1〜 小学館 

 『動物のお医者さん』『おたんこナース』の作者が書くユーモア漫画。フレンチレストラン「ロワン・デシー(この世の果て)」を舞台に繰り広げられるほほえましい人間ドラマを描く。
 苦労症の主人公やマイペースなオーナーもすばらしいけど、河合くんが一番見てて楽しいです。というかうらやましい。



2002/08/25
小野不由美 『過ぎる十七の春』 講談社X文庫 1995 ¥563

 ホラーです。怖いです。さすが小野不由美です。真夜中に一人で読むことをお奨めします。ちなみに『恐怖の17歳』(入手困難)の改題、加筆修正版。



2002/08/24
カール・セーガン 青木薫訳 『カール・セーガン 科学と悪霊を語る』 新潮社 1997 ¥2500

 新聞の出版予定の段階で予約し、初版を手に入れていたが、読み終えた後、他人に進呈してしまっていた。数年後もう一度読み返したくなって買いなおしたらすでに第3版になっていた本。
 天文学者で「核の冬」主唱者で反戦・反核兵器運動家でそしてSF作家のカール・セーガンの遺作。
 懐疑精神の重要さをメインテーマに据えて人間知性への賛歌を歌い上げた作品。
 凡百の宗教書や人生教訓本や似非科学書を読む暇があったら、この本一冊を読んだ方がよほど良い。まだ読んでない人は損をしている、と断言できる。



2002/08/24
P・K・ディック 浅倉久志編訳 『悪夢機械』 新潮文庫 1987 ¥520

 映画『マイノリティ・リポート』の原作「少数報告」が載った短編集。H・R・ギーガーが表紙を書いていてちょっと豪華。最初の短編「訪問者」と最後の短編「凍った旅」がそれなりにおもしろかった。が、一番は「スパイはだれだ?」だろう。社会風刺・トリックなどなど、とてもディックらしい一作。この一篇を読むためだけに一冊分のお金を出しても惜しくない、という出来。



2002/08/23
皆神龍太郎・志水一夫・加門正一 『新・トンデモ超常現象56の真相』 太田出版 2001 ¥1480

 「と学会」ものの新刊(近くの本屋に入らなかったので、注文して買った記憶がある)。『トンデモ超常現象99の真相』と同じ、まず伝説を書きそれから真相を書くという形式で書かれている。
 表紙の味のあるイラストがさりげにいい感じを出している。
 執筆者の一人、加門正一の文章が文章が筋道立っているので読みやすく、面白くていい。おいら的に今後の注目株である。



2002/08/20
ダニエル・キイス 『アルジャーノンに花束を』 ダニエル・キイス文庫(早川書房) 1999 ¥760

 初めて読んだのは高校生のころ、ハードカバー版で。実家にペーパーバック版(英語・日語版)もあるので、この文庫版は3冊目…。
 高速のエレベーターでアリスを追い越して上昇し、また下降するというような文章が本文中にありましたが。それよりも、駆け足でアリスに急接近し、再び急速離脱していくという姿に涙を誘われます。



2002/08/19
J・P・ホーガン 『量子宇宙干渉機』 創元SF文庫 1998 ¥920

 多元宇宙理論を元にした作品は、最近ではマイケル・クライトンの『タイムライン』(映画化進行中)があるが、それとコンセプトは似ている。もちろんホーガンの作品の方が先に書かれている。
 理論そのものよりも、人間のやり取りに主題が置かれている。最初は理論がメイン、うって変わって最後の方は、わりと手に汗握る展開。エンディングシーンは明日への希望を残して。うむうむ。
 ハインラインばりの全体主義社会となったアメリカって世界設定がまたシュール。



2002/08/19
グスタフ・ハスフォード 『フルメタル・ジャケット』 角川文庫 1986 ¥420

 ごぞんじ、キューブリック監督の映画『フルメタル・ジャケット』の原作である。フィクションのベトナム戦争ものとしての出来は非常にいい。内容は、大岡昇平の『俘虜記』・『野火』と共通するテーマ、「戦争のもたらした狂気と参加した兵士の苦悩」である。
 人肉食が飢えの軽減ためではなく狂気のなせるワザ、や、殺される側よりも殺す側の視点でいることが多い(特に相手が非戦闘員のとき)、という点が二つの戦争の時代の違いを感じてしまう。もちろん、日本軍と米軍という違いもあるのだろうが。

 いやあ、とにかく暗いし、血と狂気を地で行っているので、鬱がはいっている時は読まないほうがいいかもしらん。



2002/08/19 
山本弘 『戦慄のミレニアム』上・下 角川スニーカー文庫 2000 ¥514(上) ¥619(下)

 シェアードワールド「妖魔夜行」シリーズの第一部最終巻ともいうべき作品である(この後にもう1冊出たけど)。山本弘らしい膨大な資料収集がうかがえる作品。
 科学的理性と宗教的狂気と宗教的理性のせめぎ合い、広い視野の穏やかさと狭窄な視野の激しさとの対立、を描いた作品といえるだろうか。非常に山本弘らしい作品で、『魔獣目覚める』と並んで「妖魔夜行」シリーズの白眉としていいだろう。

 山本弘はソードワールドリプレイや、短編集を書いていたころまでは、SNEの作家の一人としてしか認識していなかった。それが妖魔夜行シリーズから急に面白くなった作家である。「と学会」関係の書籍で、小説以外でも非常に魅力的な文章を書くことも分かった。この人はもっともっと評価されてもいい作家だと思う。私の中では大作家のひとりである。
 やっぱり山本弘の作品が、グループSNEの中では一番面白い。(すでに元メンバーだけど)



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